溺れるほどの愛は深くて重く、そして甘い
「あっつ~…」

 話し込んでいたとはいえ、やはり少し長風呂をしすぎたようだ。ソファーで涼んでいると、同じく火照った様子の智弘がおもむろに私の後ろに立った。何だろうと思っているとタオルを被せられ、そのままワシャワシャと拭かれる。

「え、なに!?」
「そのままだと風邪を引くだろう。俺が乾かすから、こっちに来て座ってくれ」

 そんな言葉と共に彼は歩いていってしまう。その先にはドライヤーが用意されていた。

「いやいや、自分でやるよ!」
「我が儘言って困らせるんじゃなかったのか?」

 ニヤッと笑って手招きをされる。本当に、煮ても焼いても食えない人だ。
 そんな頭のキレる人だが、ひょんな私の一挙手一投足で乱されることだってある。そんなギャップが、彼には悪いが面白くて好きなのだ。彼の言葉巧みさを実感する度に、そんなことも思ってしまう。

 示され場所に座ると、智弘はドライヤーのスイッチを入れた。微かな温風が私の濡れた髪に吹き付けられる。彼の指が優しく、けれどしっかりと私の髪を丁寧に撫で始めた。

「ドライヤー、上手だね」
「そうか?人にするのは慣れていないから、痛かったり熱かったりしたら我慢せずに教えてくれ」

 そう言われても、本当に快適だ。なんなら、これから毎日やってほしいほど。
 でもこれを冗談でも口にすると、本当に毎日やりだすから心の中で留めておく。大歓迎だ、なんて言われて、毎日お風呂上がりにスタンバられても困る。

 程なくして、カチッという音と共に風が止んだ。髪に軽く手櫛を入れてみると、よく乾いていることが伺えた。毛先まで丁寧に乾かされている。

「ありがと」
「俺が好きでやったんだから気にするな」

 ドライヤーのコードをまとめながらも、気遣いに溢れる返事をされた。
< 70 / 86 >

この作品をシェア

pagetop