溺れるほどの愛は深くて重く、そして甘い
 至れり尽くせりになれていないせいか、変にそわそわする。申し訳ないもののすることがなく、手持無沙汰に視線を右往左往していると、智弘は呆れたようにため息をついた。

「まったく、美咲はどうやったら手放しで休んでくれるんだ?」

 その言葉に首を傾げると、ジトッと見つめられる。そんな視線を寄こされたところで、残念ながら心当たりはない。

「難しいことばかり考えて、自分の心の許容を超えた働きをして…。俺はそんなに頼りないか?」
「そんなわけない!」
「じゃあ、『休む』という仕事をしてくれ。それでも困るなら、『何も考えない』ということを考えてくれ」
 
 そんな哲学みたいな。
 胸中で突っ込むも、心を読んだかのように「楽しいことでも考えるといい」なんて言われた。

(そもそも、ぼーっとすることが苦手なのに…どうしようかな)

 何か集中できることでもあればいいけれど、ものによっては没収されてしまうだろう。真っ先に浮かんだのは映画鑑賞だが、今日はそういう気分じゃない。

(うーん…。できれば智弘と一緒に楽しめるものがいいんだけど、)
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