子供ができていました。でも、お知らせするつもりはありませんでした。
御曹司との結婚ともなれば、そこでの生活は庶民のものとは違う。この佑のセリフをもらって、美月は御曹司の意味を真の意味で理解できたような気がした。
一般的に男性が一番嫌がるような結婚生活像を提示したのだが、反応は美月の期待を大いに裏切っていたのだった。
「気になることは、他にもある?」
そう問われても、あのとっておきの辞退理由が通じなかった場合を想定していなかったから、美月はすぐに次の手がでない。沈黙して、思案するのみだ。
黙り込んでしまった美月をみて、余裕綽々で佑は宣言した。
「なさそうだな。では、今から我々はその子の両親だ。末永く、よろしくお願いします」
勝ち誇った佑のこの笑みが、美月にはとても眩しくみえた。
(え? もしかして、決まりなの?)
(ちょっと待って! こんなことって、実際に起こることなの?)
(何ていえば、いいの? ええっと……)
口角を上げて誇らしげに告げる佑は、四年前のプレゼンの姿と変わりない。畏怖堂々としていて、対峙した人はうっかりつられて彼の主張に賛同してしまいそうになる。今まさに、それである。
もう、美月は反論のセリフが見つからない。この佑の雰囲気にのみ込まれて、無言の同意をしてしまっていた。
子は鎹とはよくいったもので、ここに子供に対する愛情はあるものの、パートナーに対する愛情は訝しいカップルが誕生する。
こうして、美月は佑と結婚することとなった。
通常とは順番もスタイルも違いすぎる、親子三人の生活がはじまったのだった。
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