子供ができていました。でも、お知らせするつもりはありませんでした。

 御曹司との結婚ともなれば、そこでの生活は庶民のものとは違う。この佑のセリフをもらって、美月は御曹司の意味を真の意味で理解できたような気がした。
 一般的に男性が一番嫌がるような結婚生活像を提示したのだが、反応は美月の期待を大いに裏切っていたのだった。 

「気になることは、他にもある?」

 そう問われても、あのとっておきの辞退理由が通じなかった場合を想定していなかったから、美月はすぐに次の手がでない。沈黙して、思案するのみだ。
 黙り込んでしまった美月をみて、余裕綽々で佑は宣言した。

「なさそうだな。では、今から我々はその子の両親だ。末永く、よろしくお願いします」

 勝ち誇った佑のこの笑みが、美月にはとても眩しくみえた。

(え? もしかして、決まりなの?)
(ちょっと待って! こんなことって、実際に起こることなの?)
(何ていえば、いいの? ええっと……)

 口角を上げて誇らしげに告げる佑は、四年前のプレゼンの姿と変わりない。畏怖堂々としていて、対峙した人はうっかりつられて彼の主張に賛同してしまいそうになる。今まさに、それである。
 もう、美月は反論のセリフが見つからない。この佑の雰囲気にのみ込まれて、無言の同意をしてしまっていた。

 子は(かすがい)とはよくいったもので、ここに子供に対する愛情はあるものの、パートナーに対する愛情は訝しいカップルが誕生する。
 こうして、美月は佑と結婚することとなった。
 通常とは順番もスタイルも違いすぎる、親子三人の生活がはじまったのだった。

< 13 / 13 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:19

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

90日のシンデレラ

総文字数/197,896

恋愛(オフィスラブ)268ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
「え? 俺のこと、知らないの、シーナちゃん」 「し、知りませんよ。子会社にまで東京本社のことは、全然きこえてきませんから」 目の前のこの人は、東京本社内ではすごく有名な人らしい。 けれど、田舎の孫会社社員の真紘には関係ないことである。 「じゃあ、ちょうどいいや! シーナちゃんの部屋、オフィスに一番近いからしばらく貸して」 「え? 部屋を貸す?」 「そう。俺、今さぁ、面倒なプロジェクト抱えていて、通勤時間を節約したいんだよね~。でもオフィスに泊まり込むのは、社長命令で禁止なんで。ね、家賃は払うから。いい?」 「お断りします! っていうか、どうして初対面でそうなるの!」 傍若無人の(実は有能)副社長 北嶺 瑠樹(キタミネ ルキ) 32歳 × 田舎者の(お人好し)孫会社社員 椎名 真紘(シイナ マヒロ) 27歳 三ヶ月限定のルームシェアリングが、波乱万丈で終わるわけがない? *続編リクエストありがとうございます! アフターワード短編『ふたりだけのオーキッド・ラグーン』ができました。シンガポールでのふたりの新婚生活をお楽しみください(^^♪
その涙が、やさしい雨に変わるまで

総文字数/138,436

恋愛(純愛)187ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
記憶を失ってしまっても、好きになる人はやはり同じ? 雨の中で転落事故に遭った副社長の瑞樹、派手な事故の割には軽傷ですんだが、記憶を一部失ってしまった。 瑞樹が失ってしまった記憶は、極秘交際を続けていた秘書、三琴との日々であった。 一方の三琴は、見舞い先の病院で瑞樹が自分を忘れてしまったことに、ただただ呆然とするのみ。 記憶喪失は一時的なもの――そんな医師の診断を信じて、三琴は瑞樹に真実を告げず、秘書として彼を支え続ける。 しかし瑞樹の記憶は戻らず、彼は別の女性、転落事故で救護に当たった美沙希と結婚を決めてしまう。 事故から一年、瑞樹と美沙希の結婚準備が進む中、三琴は決意する。 結婚できなくても今までどおり秘書として瑞樹のそばに入れたらいいと思ったが、やはり苦しい。 美沙希に嫉妬して余計なトラブルを引き起こしそう、そうなる前に辞職しよう。 悩んみに悩んで、やっと決意して、三琴は辞書願を瑞樹に提出した。 だが、それは受理されない。 三琴は退職できず勤務は継続となり、瑞樹と美沙希の結婚式の日が刻一刻と近づいていく。 複雑な気持ちで過ごす三琴の前に、ある人物が現れたのだった。 創業家一族の副社長 黒澤 瑞樹(くろさわ みずき)32才 × 一般庶民の副社長秘書 松田 三琴(まつだ みこと)28才 *短編『思い出は春風に、決意は胸に秘めて』の続編になります。 短編を読まなくても大丈夫なように執筆していますが、一読すればより楽しめるかと思います。 瑞樹と三琴、ふたりの行き先を応援していただければ、ありがたいです。 *続編リクエストをありがとうございます! アフターワード短編『金の葉と、銀の雪』ができました。(ちょっとイレギュラーな)ふたりの結婚式の様子を、どうぞ(^^♪
春一番と雨一番

総文字数/40,168

恋愛(学園)57ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
仲良しグループ女子四人組で『季節限定いちごパフェ』を食べる予定だったのだが、 悪天候でなくなってしまった。 友人らと解散しひとり帰宅しようとした睦実は、軽い口調でこう誘われた。 「白井さん、ひとり? どう、パフェ食べない?」 クラスメートの日高くんであった。 なんだか成り行きで彼とパフェを食べ、話をしていくうちに クラスメートというだけの日高くんが、この日から睦実の中で特別な人となる。 友達以上恋人未満どころか、友達にもなっていない――でも日高くんは気になる人に間違いない。 恋と進路で悩む睦実と、どこか自由人で映画が大好きな日高くんの青春ラブストーリーです。 日高 隆文(ひだか たかふみ) 理系男子だけど、進路は理系ではない自由人な男子高校生 × 白井 睦実(しらい むつみ) 希望と現実に悩む理系女子で、ポジションは地味系女子高校生 目の前の今のことで精一杯の、ただ純粋に人を好きになる気持ちをお楽しみください。

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop