キミを好きになるまで、あと10秒
ひよりはその日、授業の間じゅう、成瀬のことが頭から離れなかった。

黒板の文字がぼやけて見えるのは、彼の笑顔を思い出していたからかもしれない。

友達の話も耳に入らず、心はずっと彼の隣にいた。


昼休みになると、ひよりは自然と成瀬の近くに行ってしまう自分に気づいた。


けれど話しかける勇気はまだ出せず、ただ遠くから彼を見つめているだけだった。


教室の窓の外では、風に揺れる木の葉がキラキラと光を反射している。


その穏やかな景色と、自分の中のざわめきのギャップに戸惑いながらも、ひよりの胸は少しずつ温かくなっていった。
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