推しが隣に引っ越してきまして 〜月の裏がわ〜


佑月くんの家の冷蔵庫を開ける。すっからかん。


「ごめん……なんもない……。」


ソファに横たわった佑月くんが目を瞑ったまま呟く。


「あの、お米って」
「ない」
え、嘘でしょ。あ、炊飯器もない。
よく見れば、佑月くんの家のキッチンに調理器具はほとんどない。
まじでこの人ずっと外食なんだ。
こりゃ自分の家で作って持って来た方が早い。
「ごはん、すぐ作って持って来ますね。あ、食べたいものありますか?」
「お粥食べたい……。」
「わかりました!」
「行っちゃうの?」
「え?」
「寂しい。」
「す、すぐに帰って来ます」


自分の家で爆速でお粥を作り、佑月くんの家に運ぶ。


佑月くんが、体を起こす。脇に挟んでた体温計がピピッて鳴って取り出すと、38.9度。


「俺たまに熱出すの。一年に一回くらい。」
佑月くんがぼーっとした顔で言う。お粥を食べて、美味し〜って顔をする。


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