推しが隣に引っ越してきまして 〜月の裏がわ〜
佑月くんは、お腹いっぱいになると満足して寝た。おでこに、そっと手を乗せる。まだ、すごく熱い。
佑月くんが、私の腕を引いて、抱き寄せる。
え————?
佑月くんの、体温が、熱い。
「もう少しだけ、ここにいて」
「え?」
その表情はどこか幼く見えた。佑月くんの目は虚で、まるで、夢と、現実の間を彷徨っているときのような——。熱が下がればきっと、このことも覚えてないんだろう。
「うん。」
佑月くんが横たわるソファを背もたれにして、地面に座る。
来月になればきっと、こんな日も、なかったことになるんだろう。
「もう少しだけ、ここにいて。」私も、宙に、呟く。