推しが隣に引っ越してきまして 〜月の裏がわ〜





19:30。
ドォーン!
空に花火が打ちあがる。
遠くの花火をベランダから見つめる。

夜空の遠くの方に見える花火は、ここからでも大きく見える。
ぼーっとそれを眺めて、いつかの花火大会で間近で見た花火を思い出す。

ここから見える花火は、あのときよりは小さくても、十分に夏を感じさせてくれる。
これはこれで良い。

人混みから離れて、木々が風に吹かれる音を聞きながら、静かに眺める花火も、悪くない。


ラムネを片手に、ベランダの柵に手をかける。ラムネの瓶を振ると、カランカランとビー玉とガラスがぶつかる音がする。


「花火、見てる?」
隣のベランダから声がする。

「あっ、はい!」

「近くで見る花火、綺麗だろうなぁ。」
「近くで花火、見たことありますか?」
衝立越しに話す。
「小さいときに一回だけ。あんまよく覚えてない。」
そっか。

「あっ、花火します?しましょう!」




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