推しが隣に引っ越してきまして 〜月の裏がわ〜



「——ということになっておりまして……。」

金曜日の夜。いつもの居酒屋。

奈緒ちゃんの目が点になっている。そりゃそうだ。

佑月くんが隣に引っ越してきてから、奈緒ちゃんとは連絡を取っていなかった。

その間にこんなことになっていたなんて、思いもしなかっただろう。

「で、明日、土曜日ドライブに誘われた。」

「ハァ!?」奈緒ちゃんがびっくりして目を丸くする。
「すみません……。」反射的に肩をすくめて謝る。

「なんで謝んの?」
「いや、なんかよくないじゃんだって……。」

本当は、今日、奈緒ちゃんと会うのも緊張した。
こんなこと打ち明けたら引かれるか、怒られるか、呆れられると思った。

「まあよくはないだろうけどさぁ。」
奈緒ちゃんが枝豆を摘む。
「まあよかったじゃん。知らんけど。」
アハハ!って奈緒ちゃんが豪快に笑う。

「いやあ、なにがなんだか全然わからん。現実の話?これ。」
奈緒ちゃんがビールをグビグビ飲む。

「会ってない間にまさかそんなことになっていたとはなぁ。」


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