推しが隣に引っ越してきまして 〜月の裏がわ〜
仕事から帰ってきて家に入ろうとしたら、鍵がなかった。
職場で荷物を整理したとき、家の鍵が入ったポーチを取り出してそのままにしてしまったことを思い出す。
うわぁ…どうしよ。もう、職場誰もいないだろうな。
マンションの管理人室に電話をかける。出たと思ったら流れてきたのは自動音声。
”営業時間は、午前9時から午後5時です。恐れ入りますが、————”
終わった……。
ゴン!ドアに額をぶつけ、そのまま寄りかかる。
「おぉ。おつかれーい。」
声をした方を向くと、佑月くんだった。「…大丈夫?笑」
「あ…。」
ドアから離れて前髪を整える。「はい。なんでもないです。」
「あ、そう。」
佑月くんが私の後ろを通りすぎ、自分の部屋の鍵を開ける。
なかなか部屋に入ろうとしない私を、佑月くんが不思議そうに見て、それから、「もしかして家入れないの?」って聞いてきた。
「えっ…と…」
鍵を職場に忘れまして、なんて言ったらとんだ間抜け野郎だと思われるかも。
「飯食う?」
佑月くんがガチャってドアを開ける。
「えっ、」
「大丈夫大丈夫」眞鍋、来ねえよ。って佑月くんが小声で言って、笑った。
数分後、眞鍋は、やって来て、リビングに入って私の姿を見るなり、持っていたスーパーの袋をドサッと足元に落とした。