完璧な社長は、私にだけ素顔を見せて溺愛する

明け方、ようやく修正が完了した。窓の外が白み始めている。

徹夜明けの疲労感はあったけれど、達成感の方が大きかった。

そして何より、桐原社長がずっとそばにいてくれたことで、孤独感を感じることなく作業を進められた。

「完成しました!」

「お疲れ様でした。素晴らしい仕事ぶりでしたよ」

桐原社長の温かな声が、電話越しに響く。

「桐原社長のおかげです。本当にありがとうございました」

「いえ、僕は見ていただけです。君の能力と努力の賜物ですよ」

その言葉を聞いた時、私の心の奥で何かが温かくなった。

仕事に対する真摯な姿勢を理解してくれる人がいる。

それがたまたま、婚活パーティーで出会った相手だったことに、運命的なものを感じずにはいられなかった。

「今度、改めて状況をご報告させていただきたく……」

「報告は結構です。それより……」

彼の声が、少し躊躇うように変わった。
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