完璧な社長は、私にだけ素顔を見せて溺愛する
第3話 偶然の再会
火曜日の夜8時過ぎ。私は、ようやく会社を出ることができた。
昨夜の徹夜作業の疲れが残っているが、今日は朝から会議が続き、新しいプロジェクトの企画書作成にも追われていた。
疲れた頭をリフレッシュしたくて、帰り道にある大型書店に立ち寄ることにした。
自動ドアをくぐると、柔らかな照明と本の匂いが私を包んだ。
平日の夜とはいえ、店内にはそれなりに人がいる。仕事帰りの会社員、学生、カップルなど、様々な人がそれぞれの目的で本を選んでいた。
私は、真っ先に旅行コーナーに向かった。
最近、仕事のストレスで心が疲れてしまい、「ひとり旅」への憧れが強くなっている。
どこか遠い場所で、誰も知らない自分になってみたい。そんな気持ちで、旅行ガイドブックを手に取った。
「九州の温泉巡り」
「北海道グルメ旅行」
「沖縄離島ガイド」
ページをめくりながら、私は小さくため息をついた。
いつも旅行の計画は立てるのに、結局仕事が忙しくて実行に移せないことが多い。今度こそは、本当に一人で旅に出てみたいな。
「あれ、こんなところで……」
突然、聞き慣れた低い声が背後から聞こえた。振り返ると、桐原圭佑が立っていた。