完璧な社長は、私にだけ素顔を見せて溺愛する

私は株式会社フューチャーリンクで、企業のDX化支援プロジェクトを担当している。

現在は老舗アパレル企業のECサイト全面リニューアルという、売上を左右する重要案件のリーダーを任されている。

先月のプロジェクトでは、クライアントの売上が前年同期比120%を達成した。チームの協力があってこその成果だが、上司からは「新谷の判断が的確だった」と評価された。

それなのに、婚活の場では……。

「本当の私って、いったい何なんだろう……もう疲れた」

心の底からの言葉だった。

会社では新谷(しんたに)(あずさ)として、確固たる地位を築いている。けれど婚活の場では、そのことが男性たちを萎縮させてしまう。

「梓は、どっちも本当の梓よ。いつか、全部の梓を愛してくれる人がきっと現れるって!」

春菜の優しい声が胸に沁みる。彼女だけが私の完璧な仕事の顔も、婚活での不器用な姿も知っている。

けれど、記憶の奥で学生時代の恋人・大輔の声が蘇る。
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