完璧な社長は、私にだけ素顔を見せて溺愛する
「まずは、映画はいかがですか? その後、少しお話できる場所に案内したいと思います」
私たちは、渋谷の映画館へ向かった。
「梓さんは、どのような映画がお好みですか?」
圭佑さんが尋ねる。
「実は……アクション映画が好きなんです」
私は、少し恥ずかしげに答えた。婚活では、絶対に言わない趣味だった。女性らしくないと思われそうで。
「アクションですか。意外ですね」
圭佑さんが少し驚いたような顔をする。私は慌てて付け加えようとしたが、彼は続けた。
「でも、とても梓さんらしい。芯の強い梓さんだからこそ、そういう映画に魅力を感じるのかもしれませんね」
私の好みを否定するのではなく、私らしさとして受け入れてくれた。その言葉に、私の胸は温かくなった。
「梓さんのおすすめを観てみたいです」
結局、私たちは最新のアクション映画を選んだ。
映画館の暗闇の中、私は彼の存在を強く意識していた。隣に座る彼の呼吸、時々、腕が触れ合いそうになる距離感。
途中で館内が少し冷えてきた時、圭佑さんは私が寒がっているのに気づき、さりげなく自分のジャケットを私の肩にかけてくれた。
「ありがとうございます」
私が小声でお礼を言うと、彼も小声で答えた。
「梓さんが風邪をひいたら困るので」
その『梓さんが』という特別扱いに、私の心は大きく揺れた。