完璧な社長は、私にだけ素顔を見せて溺愛する

「いえ、時々仕事で使うことがあるので」

でも、その説明には何かしら違和感があった。仕事で使うにしては、あまりにも自然すぎる立ち振る舞いだった。

「梓さん以外の女性を、この場所に連れてきたことはありません」

圭佑さんが突然、真剣な表情で言った。

「え?」

「ここは、僕にとって特別な場所なんです。だから、梓さんだけに見せたかった」

彼の言葉に、私の心臓が激しく鼓動し始める。

特別な場所を、私だけに見せてくれた。その事実が、私の胸を熱くした。

私たちは、お互いの趣味について話し続けた。

圭佑さんは私の旅の話を、本当に真剣に聞いてくれる。

「梓さんの話を聞いていると、僕も一緒に旅をしている気持ちになります」

「本当ですか?」

「ええ。梓さんと一緒なら、旅がもっと特別なものになりそうだ」

圭佑さんがふと呟いた。そのとき、私は重要なことに気づいた。
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