完璧な社長は、私にだけ素顔を見せて溺愛する
「温かい家庭を築けるよう、頑張りたいと思います。よろしくお願いします」
お辞儀をして席に戻る時、彼の視線がまだ私を追っているのが分かった。頬が熱くなるのを感じながら、私は慌てて座り込む。
心臓の鼓動が異常に速い。まさか、あの完璧な桐原社長が婚活パーティーに参加しているなんて……。
「次は、男性の方の自己紹介です」
司会者の声と共に、男性が一人ずつ前へ進む。
私は近くの装飾用の白いバラの花瓶の陰に身を隠しながら、恐る恐る桐原社長の様子を窺った。
そして、ついに彼が立ち上がる。
「初めまして、桐原圭佑と申します。29歳です」
その瞬間、会場の空気が変わったのを感じた。何人かの女性が、小さくざわめいている。彼の存在感は、やはり圧倒的だった。
「IT企業の代表をしております。多くの優秀な方々に支えられ、日々学ばせていただいております」
低く落ち着いた声、計算された魅力的な笑顔。まさに、完璧なエリート経営者そのもの。
でも、なぜだろう。その完璧すぎる自己紹介の向こうに、何か複雑なものを感じ取ってしまう。
まるで、私が婚活で演技をしているように、彼もまた何かを隠しているような……。