完璧な社長は、私にだけ素顔を見せて溺愛する
父親の表情が、一気に険しくなった。
「新谷梓のことか」
「ご存知だったんですか」
「当然だ。お前の動向は、常に把握している」
父が立ち上がり、俺の前に歩み寄ってきた。
「圭佑、目を覚ませ。あんな身分の女性と関わっていては、桐原家の恥になる」
「身分だと?」
俺の拳が震えた。
「梓のどこが恥なんですか。彼女は誰よりも真面目で、能力があって、心の美しい女性です」
「それは認めよう。だが、お前は桐原グループの跡取りだ。感情で動いてはいけない。麗華さんは、お前にふさわしい女性だ」
「ふさわしいかどうかを決めるのは、父さんじゃない。俺です」
俺は、父親を真っ直ぐ見据えた。
「俺は、梓さんと結婚します。麗華さんとの婚約は、破談にしてください」
「ふざけるな!」
父親が初めて声を荒げた。
「お前がどれだけの責任を背負っているか、分かっているのか。何千人もの社員の生活を、お前が守らなくてはならないんだぞ」
「分かっています。だからこそ、KIRIHARA TECHを立ち上げたんです」
俺は一歩も引かなかった。
「俺は、父さんの敷いたレールの上を歩くだけの人間にはなりたくない。自分の力で会社を成功させ、自分で選んだ女性と生きていきたい」
「それなら、会社も財産も失うことになるぞ。桐原の名前も捨てることになる」