完璧な社長は、私にだけ素顔を見せて溺愛する
【圭佑side】
昨夜、梓が去った後、俺はすぐに動き始めた。
父と麗華さんとの面会を明日午前に設定させ、さらに秘書に梓への連絡を命じた。
「今日の夕方、どうしても会いたい」と、伝えてもらうためだ。
電話を切った後、俺は窓の外の夜景を見つめた。
これから父親と対峙する。桐原グループの御曹司としての人生を捨てる覚悟を、はっきりと伝えなくてはならない。
怖くないと言えば嘘になる。でも、梓を失う恐怖の方が、遥かに大きかった。
◇
翌朝、俺は桐原グループ本社の最上階にある父の執務室に向かった。
コンコン。
俺はドアをノックして、中に入る。
「失礼します」
「ああ、圭佑か。どうした、そんな顔で」
デスクに座る父親は、俺の決意に満ちた表情に気づいていないかのように平然としていた。
「話があります」
「麗華さんとの婚約発表の件か? ちょうど良い。来月に……」
「その婚約を、破談にさせてください」
父の手が、書類の上で止まった。
「何を言っている」
「俺には、愛する女性がいます。彼女と結婚したい」