完璧な社長は、私にだけ素顔を見せて溺愛する
「私では、ダメなのでしょうか」
その言葉に、俺は少し胸が痛んだ。
「圭佑さん、私も……あなたを愛そうと努力していました」
麗華の目に、初めて本当の感情が宿った。
「でも、あなたが新谷さんを見つめる目を見て分かりました。私は、あなたにそんな風に見つめられたことがない」
彼女の悲しげな微笑みに、俺は申し訳なさを感じた。
「麗華さんは、素晴らしい方です。でも、僕の心を満たしてくれるのは梓だけなんです」
「私たちは、最初から政略結婚でしたものね」
麗華は立ち上がった。
「でも、私は密かに本当の愛になることを願っていました。圭佑さんと過ごす時間の中で、何か変わるかもしれないと」
「すみません……」
「いえ。私も、本当に愛される関係を築きたいですから。いつか、私を心から愛してくれる方に出会えると信じます」
彼女の理解に、俺は深く頭を下げた。
「ご迷惑をおかけして、申し訳ありませんでした」
「いえ。あなたが幸せになることを祈っています。そして……新谷さんを、大切にしてあげてください」
麗華は最後に、本当に温かな笑顔を見せてくれた。
それは、義務ではなく、心からの笑顔だった。