下剋上御曹司の秘めた愛は重すぎる
祖父、若宮柳之介は東京・銀座にある老舗、ホテルロイヤルヴィリジアン(旧ホテルグリーンワカミヤ)の社長である。
祖母の早苗と共に、1人息子である俺の父には、日本橋の隣家に住む名家・宝生寺家との縁組を望んでいた。
しかし父は庶民の娘である母と恋に落ちた。もちろん祖父母は大激怒、猛反対。父は勘当を言い渡され、母と駆け落ちした。
だが初めて会った時、祖父はこう言った。
「本気で勘当を言い渡したわけではなかった。そう言えば諦めると思ったのだ。しかし息子は本気だった。その後、君たち家族のことは探そうと思えばいくらでも手段はあった。だが私たちは半ば意地になり、多大な仕事を抱えていたこともあり捨て置いた」
話しながら祖父の目からは涙が伝った。
「だから息子の死を知らず、君の母上の病気のことも知らず、君に大変な苦労をさせた」
「いえ、そんな。頭を上げて下さい」
「息子と君の母上の結婚については、もはやとやかく言わぬ。可愛い孫である君が生まれてきたことを否定するようなことは言いたくない。そこで君に頼みがある。私の後継者としてホテルロイヤルヴィリジアンを継いで欲しい」
「俺が……ホテルの次期社長にということですか?」
「そうだ。経営困難の現状、本来ならばこの年寄りは退任して若い者に任せるべきであった。だが、どうしても血を分けた我が子に跡を継いで欲しく、息子を探した。そこですべてを知り、君の存在にたどり着いた」
祖父の表情からは、俺に対して肉親としての親愛が感じ取れた。そこに芝居がかったものはなかった。
祖母の早苗と共に、1人息子である俺の父には、日本橋の隣家に住む名家・宝生寺家との縁組を望んでいた。
しかし父は庶民の娘である母と恋に落ちた。もちろん祖父母は大激怒、猛反対。父は勘当を言い渡され、母と駆け落ちした。
だが初めて会った時、祖父はこう言った。
「本気で勘当を言い渡したわけではなかった。そう言えば諦めると思ったのだ。しかし息子は本気だった。その後、君たち家族のことは探そうと思えばいくらでも手段はあった。だが私たちは半ば意地になり、多大な仕事を抱えていたこともあり捨て置いた」
話しながら祖父の目からは涙が伝った。
「だから息子の死を知らず、君の母上の病気のことも知らず、君に大変な苦労をさせた」
「いえ、そんな。頭を上げて下さい」
「息子と君の母上の結婚については、もはやとやかく言わぬ。可愛い孫である君が生まれてきたことを否定するようなことは言いたくない。そこで君に頼みがある。私の後継者としてホテルロイヤルヴィリジアンを継いで欲しい」
「俺が……ホテルの次期社長にということですか?」
「そうだ。経営困難の現状、本来ならばこの年寄りは退任して若い者に任せるべきであった。だが、どうしても血を分けた我が子に跡を継いで欲しく、息子を探した。そこですべてを知り、君の存在にたどり着いた」
祖父の表情からは、俺に対して肉親としての親愛が感じ取れた。そこに芝居がかったものはなかった。