雷の道「十五年ぶりの故郷で、初恋の彼女と再会した六日間」 ──記憶と現在が交差する、静かな再生の物語。

待ち合わせの場所に着くと洋介が古い雑居ビルの前で先に来て待っていた。
今にも壊れそうな外観だった。
町一番のお洒落な店らしいけど、とてもそういう風には見えなかった。
階段を降りていくと広い空間が広がりその片鱗は確かにあった。
中央にはビリヤード台が、その周りにはテーブルが配置されていた。
壁一面にはカラフルな酒が天井まで飾られていて、それは古い映画のワンシーンを彷彿とさせた。
どこかでいつか見た、お洒落と呼ばれていたバーそのものだった。

僕達は厨房の前のカウンターに腰を降ろした。
時計を見たらまだ夕方の五時半だった。
市役所ってこんなに早く終わるんだ、と思いながら僕は美沙岐の事が頭をよぎった。
美沙岐はこの店に来たことがあるんだろうか?
昨日一緒に行った店の近くだ。
狭い町だから繁華街のエリアは更に狭い。
人類みな兄弟的な場所なんだ。
そんな事はどうでも良いけど、つまり僕が気になり始めたのは美沙岐と洋介が知り合いかって事だ。

「さっきはすまなかったな。急に呼び止めて、中途半端に終わって。市役所なんて苦情処理係のようなものだよ。いつも急に呼び出される。行くとたいしたことはない。今じゃなくていいじゃん、と言いたくなる。でも行かないと面倒なことになる。その繰り返しだよ。何のために大学を出てわざわざ市役所にはいったか。親が知ったら悲しむよ。でも近くに住むのが親孝行ってもんだ。しかしホント、久しぶりだよな。今まで何してたんだ?同窓会にも来なかっただろ?みんな心配してたんだ。まあ、今じゃ帰省してくるやつらも少なくなったけど。なんせ産業の無い町だから、仕事もない。あっても給料が安い。いい事と言ったら土地と物価が安いから安い給料でもやっていける。でも子供を外にやると金がかかる。この負のループ。ジュンの親も俺の親も大変だったと思うよ。東京の大学にやって仕送りするなんて。仕送りいくらだった?奨学金もらった?あれは体のいい高利貸しだよな。金利なんて銀行から借りるのと変わらないんだからな。納得いかないよな。で、何しに帰ってきたんだ?何を調べてた?」

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