隠れ溺愛婚~投資ファンドの冷徹CEOは初恋の妻を守りつくす~
 “一晩だけ恋人に”と、望んだのは茉結莉の方だ。その思い出だけで、一生を生きていこうと思っていた。
 それなのに、もうどうしようもない程、森野のことが恋しくてたまらない。

「なぁ、茉結莉」

 茉結莉は、横から顔を覗き込ませる大輔の声にビクッとすると、慌てて顔を上げる。

「お前、最近急に綺麗になったよな……。色気が出たって言うか……。その……やっぱり、結婚するからか?」

 普段は憎まれ口しか叩かない大輔の、やけに優しい声色に調子が狂う。
 茉結莉はわざとらしく大袈裟に手をぶんぶんと横に振った。

「な、なに言ってんの!? 愛なんてない、形だけの結婚だよ? ばっかじゃないの?」

 茉結莉はあははと笑い飛ばすが、それでも大輔はじっと茉結莉の顔を見つめたままだ。
 すると突然、大輔が茉結莉の両手を握った。

「茉結莉、俺と駆け落ちしよう」
「はい!?」
「お前のこと、一生大事にするから。どこか遠くに、俺と逃げよう」
「だ、大輔、何を言って……」
「俺はずっと茉結莉のことが、好きだったんだよ!」

 戸惑う茉結莉の声を遮るように、大輔が大声を出した。
 大輔に突然想いを告げられて、茉結莉の頭が一瞬真っ白になる。
< 21 / 61 >

この作品をシェア

pagetop