隠れ溺愛婚~投資ファンドの冷徹CEOは初恋の妻を守りつくす~
「あ、あのね、この方は森野さんって言って……」

 茉結莉がそこまで言ったところで、森野は軽く手を上げると、目を細めて大輔をチラッと見る。

(どうしたんだろう?)

 すると不思議そうに首を傾げる茉結莉の目線の先に、事務所の奥から父がやってくるのが見えた。

「やぁ、三砂さん。ここにいらっしゃいましたか。工場(こうば)の方で皆が集まってますので、お願いします」

 笑顔で語りかける父の言葉に、茉結莉は「えっ」と思わず声を出す。
 聞き間違いだろうか? 父は森野に“三砂”と呼びかけた気がする。

「……三砂?」

 戸惑ったように口を開いた茉結莉に、父は満面の笑みを見せた。

「そうだよ、茉結莉。この方が三砂慶一郎さんだ」

 父の声に、茉結莉は息を止めると目を見開いた。

(三砂……慶一郎……?)

 茉結莉の目の前に立つこの人は、明らかに茉結莉が一夜を共にした森野のはずだ。

「う、嘘よ……」

 すると狼狽える茉結莉の前で、父が満足そうにうなずいた。

「いやぁ父さんも驚いたよ。三砂さんは、子供の頃、うちの工場によく出入りしてたそうじゃないか。これで父さんも安心だよ」

 父は三砂に親し気に笑いかけると、やっと肩の荷が下りたとばかりに、何度もうんうんとうなずいている。
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