隠れ溺愛婚~投資ファンドの冷徹CEOは初恋の妻を守りつくす~
 茉結莉は愕然とすると、唇をきつく噛みしめた。

(なんてバカなの……)

 あの日、すべてを捧げてもいいと思った憧れの初恋の人は、会社を乗っ取った張本人で、あろうことか、これから自分の夫になる人だったなんて思いもよらなかった。

「森野は母の旧姓だ」

 そんな茉結莉の様子に気がついたのか、三砂は静かにそう言うと、さらに茉結莉の耳元にそっと顔を寄せる。

「身体は平気だったか? 少し無理をさせたから」

 三砂の声に、茉結莉はカッと頬を真っ赤に染めると、睨むように顔を上げた。

「へ、平気です!」

 あの日と同じ、三砂の艶のある低い声に不覚にも心臓がドキッと波を打ってしまう。
 茉結莉は自分の動揺する心を悟られないように、わざと素っ気なく顔を背けた。

「それならよかった」

 三砂は茉結莉の様子にくすりと肩を揺らすと、くるりと背を向けて歩き出した。
 茉結莉は深くため息をつくと、父とともに工場へと向かう三砂の後姿に目をやる。

(森野さんが、ミサゴだったなんて……)

 恋しくてたまらなかった人との再会は、最悪なパターンで訪れた。

(これから、どうしたらいいの?)

 複雑な気持ちでその背中を見ていた茉結莉は、急に肩を叩かれてビクッと顔を上げた。
 見ると大輔が神妙な顔つきで茉結莉を見つめている。
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