隠れ溺愛婚~投資ファンドの冷徹CEOは初恋の妻を守りつくす~
 あまりに真っすぐなその瞳に、茉結莉はまるで絡めとられるように目が逸らせなくなる。
 三砂は息を吸うと、静かに声を出した。

「森野であろうと、三砂であろうと、俺は俺だ。あの日、君の願いを聞くと決めたのも俺だし、君との結婚を希望したのも俺だ。そしてあの日、君を抱いたのも俺だ」

 三砂の言葉に、茉結莉の口元から小さく息が漏れる。

(それって、どういう意味……?)

 茉結莉は戸惑ったように顔を上げた。

 茉結莉との結婚は、三砂にとってはビジネスの一つのはずだ。
 だからこそ“今夜だけ恋人に”という、茉結莉の身勝手な願いも聞き入れたのだと思っていた。
 でも、そんな言い方をされると、別の意味があるのではないかと思ってしまう。

 すると戸惑う茉結莉の様子に、しばらくして三砂は「まぁいい」と静かに言った。

「明日は別の仕事が入ってるから、会社には顔を出せないと思う」

 三砂の低い声に、茉結莉は空っぽになったお皿に目線を落としながら、小さくうなずく。

「美味しかったよ。ありがとう」

 三砂はそう言うと、何事もなかったかのようにキッチンを出て行く。

 三砂の真意がわからない。何も期待してはいけないと自分に言い聞かせながらも、茉結莉はどこかで期待が膨らむ自分がいることを感じてしまう。
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