解けない魔法を このキスで
靴を拾ったシンデレラ
「きゃ……」
かすかな声が聞こえた気がして、高良は顔を上げる。
神奈川県の葉山にあるリゾートホテル『フルール葉山』の2階。
吹き抜けの大きな窓からきらめく海が見え、緩やかなカーブを描く大階段が、ロビーのある1階へと繋がっている。
その階段の中央に、淡いブルーのドレスに身を包んだ女性がいた。
どうやら急いで階段を下りる途中で立ち止まったらしい。
後ろを振り返る動きに合わせて、ゴージャスなドレスがふわりと大階段いっぱいに広がり、鮮やかな深紅の絨毯と相まって美しい。
まるで映画のワンシーンのようで、高良は思わず目を見張った。
女性はドレスをつまんで軽やかに階段を駆け上がる。
その先に、シャンパンベージュの靴が片方落ちていた。
(……シンデレラ?)
ふと頭の中にその言葉が浮かぶ。
だがそのシンデレラは高良のイメージに反して自ら靴を拾うと、「ああ、もう!」と小さく独りごちて、履いていたもう片方の靴も脱いだ。
(……え?)
高良が眉根を寄せていると、女性は靴を片手に階段を一気に駆け下りる。
ドレスのトレーンがさざ波のように揺れ、再びその美しさに目を奪われていると、階段を下りた女性はすぐ横の開け放たれたガラス扉からガーデンへと姿を消した。
「副社長? どうかなさいましたか?」
目に焼きついた夢の中のような光景にしばらく動けずにいると、隣にいる40代の支配人に声をかけられる。
「いや、なんでもありません」
短く答えてから、高良は前に向き直って歩き出した。
かすかな声が聞こえた気がして、高良は顔を上げる。
神奈川県の葉山にあるリゾートホテル『フルール葉山』の2階。
吹き抜けの大きな窓からきらめく海が見え、緩やかなカーブを描く大階段が、ロビーのある1階へと繋がっている。
その階段の中央に、淡いブルーのドレスに身を包んだ女性がいた。
どうやら急いで階段を下りる途中で立ち止まったらしい。
後ろを振り返る動きに合わせて、ゴージャスなドレスがふわりと大階段いっぱいに広がり、鮮やかな深紅の絨毯と相まって美しい。
まるで映画のワンシーンのようで、高良は思わず目を見張った。
女性はドレスをつまんで軽やかに階段を駆け上がる。
その先に、シャンパンベージュの靴が片方落ちていた。
(……シンデレラ?)
ふと頭の中にその言葉が浮かぶ。
だがそのシンデレラは高良のイメージに反して自ら靴を拾うと、「ああ、もう!」と小さく独りごちて、履いていたもう片方の靴も脱いだ。
(……え?)
高良が眉根を寄せていると、女性は靴を片手に階段を一気に駆け下りる。
ドレスのトレーンがさざ波のように揺れ、再びその美しさに目を奪われていると、階段を下りた女性はすぐ横の開け放たれたガラス扉からガーデンへと姿を消した。
「副社長? どうかなさいましたか?」
目に焼きついた夢の中のような光景にしばらく動けずにいると、隣にいる40代の支配人に声をかけられる。
「いや、なんでもありません」
短く答えてから、高良は前に向き直って歩き出した。
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