解けない魔法を このキスで
ご招待
一方ホテル『プラージュ横浜』では、高良と支配人とブライダルプランナー達が集まり、週末の挙式のフィードバックを行っていた。
「私、今回の件で自分の考えを改めました」
そうチーフプランナーがしみじみと言う。
「常にお客様一人一人に誠実に向き合ってきたつもりです。だけどあの花嫁様がドレスを諦め切れなくて泣いてしまわれた時、なんとかしてなだめようと必死でした。他のお客様が来店される時間を気にして、とにかく泣き止んでいただきたくて。このドレスをどうしても着たいという花嫁様の気持ちに、少しも寄り添うことが出来ませんでした。それを白石さんに教わった気がします」
すると支配人も大きく頷いた。
「私もです。これまでソルシエールのドレスに対して、もっとサイズ展開してほしいとか、どうにかしてうちと提携してほしいとか、そんなことしか考えていませんでした。白石さんはきっと、ドレスを着る花嫁様のことを考えながら、一着一着心を込めて作っていらっしゃるのでしょうね。それがよく分かりました。私も見習わなければなりません」
言葉を噛みしめる支配人に、プランナー達もしんみりと耳を傾ける。
高良はそんなスタッフ達を見ながら、美蘭のことを思い出していた。
(あの時は頑固者だの、いい加減言うことを聞いてくれだの、散々なことを言ってしまった。だが彼女の信念は我々ホテルスタッフにとって、一番大切なことではないか)
そう思い、スタッフを見渡して口を開く。
「マニュアルやこれまでの前例にとらわれず、今、目の前にいらっしゃるお客様に対して誠実に向き合う。そのことが改めて大切だと私も感じた。ホテルの都合をお客様に押しつけてはならない。一人一人のお客様の気持ちを第一に、心を尽くしていこう」
「はい!」
その場にいる全員がしっかりと答え、高良も頷く。
最後に、例の花嫁の担当プランナーが手を挙げた。
「あの、副社長」
「なんだ?」
「私、どうしても白石さんにお礼が言いたくて。昨日はバタバタしていてきちんとご挨拶が出来なかったので、改めてお会い出来ないでしょうか? 次のソルシエールのドレス持ち込みの挙式は1か月以上先になるので、白石さんがいらっしゃるのもその頃になってしまうのです」
「ああ、なるほど」
「近いうちに、私がソルシエールのアトリエにご挨拶に伺っても構いませんか?」
高良はデスクに両肘を載せて考えてから顔を上げた。
「いや。それならお礼を兼ねて、こちらにご招待しよう。私から連絡してみる」
「はい! よろしくお願いします」
プランナー達が皆、明るい表情になり、高良も頬を緩めた。
「私、今回の件で自分の考えを改めました」
そうチーフプランナーがしみじみと言う。
「常にお客様一人一人に誠実に向き合ってきたつもりです。だけどあの花嫁様がドレスを諦め切れなくて泣いてしまわれた時、なんとかしてなだめようと必死でした。他のお客様が来店される時間を気にして、とにかく泣き止んでいただきたくて。このドレスをどうしても着たいという花嫁様の気持ちに、少しも寄り添うことが出来ませんでした。それを白石さんに教わった気がします」
すると支配人も大きく頷いた。
「私もです。これまでソルシエールのドレスに対して、もっとサイズ展開してほしいとか、どうにかしてうちと提携してほしいとか、そんなことしか考えていませんでした。白石さんはきっと、ドレスを着る花嫁様のことを考えながら、一着一着心を込めて作っていらっしゃるのでしょうね。それがよく分かりました。私も見習わなければなりません」
言葉を噛みしめる支配人に、プランナー達もしんみりと耳を傾ける。
高良はそんなスタッフ達を見ながら、美蘭のことを思い出していた。
(あの時は頑固者だの、いい加減言うことを聞いてくれだの、散々なことを言ってしまった。だが彼女の信念は我々ホテルスタッフにとって、一番大切なことではないか)
そう思い、スタッフを見渡して口を開く。
「マニュアルやこれまでの前例にとらわれず、今、目の前にいらっしゃるお客様に対して誠実に向き合う。そのことが改めて大切だと私も感じた。ホテルの都合をお客様に押しつけてはならない。一人一人のお客様の気持ちを第一に、心を尽くしていこう」
「はい!」
その場にいる全員がしっかりと答え、高良も頷く。
最後に、例の花嫁の担当プランナーが手を挙げた。
「あの、副社長」
「なんだ?」
「私、どうしても白石さんにお礼が言いたくて。昨日はバタバタしていてきちんとご挨拶が出来なかったので、改めてお会い出来ないでしょうか? 次のソルシエールのドレス持ち込みの挙式は1か月以上先になるので、白石さんがいらっしゃるのもその頃になってしまうのです」
「ああ、なるほど」
「近いうちに、私がソルシエールのアトリエにご挨拶に伺っても構いませんか?」
高良はデスクに両肘を載せて考えてから顔を上げた。
「いや。それならお礼を兼ねて、こちらにご招待しよう。私から連絡してみる」
「はい! よろしくお願いします」
プランナー達が皆、明るい表情になり、高良も頬を緩めた。