解けない魔法を このキスで
抑え切れない想い
【ミラノ着。こちらは凍えるような寒さですが、いつ見てもドゥオーモは美しい】

翌日。
執務室のパソコンでSNSの投稿を見た高良は、思わず両手の拳を握りしめた。

アカウント名は【TomonoriKasuga】
アップされた写真は、有名な大聖堂をバックに佇む絵になる一枚で、写っているのは春日ブライダルの副社長だった。

コメント欄には次々と
【相変わらずかっこいいですね、副社長。モデルみたい】
【今回はお仕事ですか? もしや彼女が出来たとか?】
【いやー! そんなこと絶対にないですよね?】
と、女性からの書き込みが増えていく。

高良は大きなため息をつくと、デスクに両肘を載せて、組んだ手に顔を伏せる。
もしやと思ったことが、現実になっていた。

(間違いない。彼女は春日副社長と一緒にミラノに飛んだんだ)

どうしてなのか。
自分の知らないところで、なにがあったのか。
問い詰めたくても、今はどうしようもない。

(この瞬間にも、二人は一緒にいるかもしれないのに)

思わずグッと両手を握りしめた。

5日後の土曜日、ここ『プラージュ横浜』で結婚式を挙げる花嫁が、ソルシエールのドレスを持ち込むことになっている。
美蘭は立ち会うつもりなのだろうか。
さすがに今回ばかりは無理では?

(いや、彼女ならきっと来るはずだ)

そこで必ず話をしよう。
はやる気持ちを抑えながら、高良はなんとか冷静を装いつつ週末を待った。
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