解けない魔法を このキスで
(うむむ、これは一体どういう状況なの?)

その日の仕事を終えて未散が帰っていくと、美蘭は一人ソファで膝を抱えていた。
時折確認するスマートフォンには、相変わらず高良からの連絡はない。

(あれって夢だったのかな。あ、そうかも! 私、時差ボケで寝ぼけてたし。それにしてはリアルな夢だったけど)

そっと唇に手を触れてみると、高良とのキスの感触が蘇ってきて真っ赤になる。
たまらずクッションを胸に抱えて顔をうずめた。

(あー、もう! 夢だったのか現実だったのか、それだけ教えてー)

足をバタバタさせながら身悶えていると、スマートフォンにメッセージが届いた。
着信音を聞いて、美蘭はガバッと身体を起こす。

(もしかして新海さんから!? ん? 違う。春日副社長?)

一瞬、高良からのメッセージかと喜んだが、違うと分かって一気にテンションが下がった。
なんの用だろうと、メッセージを開いて読む。
ミラノではありがとうございましたというお礼と、体調は大丈夫ですか?という労い。
そして近々『フルール葉山』でもう一度お会い出来ませんか?と書かれていた。

(なんだろう、仕事の話かな。私もオーダーを受けたウェディングドレスの持ち込みのことで、確認したいことあるし)

そう思い、承知いたしましたと返信した。
< 58 / 91 >

この作品をシェア

pagetop