解けない魔法を このキスで
【こんばんは。仕事はもう終わった?】

その日の夜、ようやく高良からメッセージが届いた。
だが美蘭は手放しで喜べない。

【こんばんは。はい、終わりました】

淡々と返事を返した。

【そう、お疲れ様。体調はどう?】
【元気です。もう時差ボケも治りました】
【良かった。本当は昨日も連絡したかったんだが、ゆっくり休んでほしくてこらえたんだ】

そうだったのかと、ようやく美蘭は表情を和らげる。

【土曜日にプラージュで、ソルシエールのドレス持ち込みの挙式が入っていると聞いた。君が立ち会うの?】
【はい、そのつもりです】
【それなら着替えを持って金曜の夜においで】

えっ!と思わず美蘭は声に出して驚いた。

「ど、どういうこと? それって、つまり?」

アワアワしてしまい、返信出来ない。
なんと返せばいいのかも分からなかった。

【美蘭? どうした?】

不思議に思ったのか高良がそう聞いてくるが、その「美蘭」呼びにもドキッとする。
顔を真っ赤にしながら、とにかくなにか返事をしなければと焦った。

【はい、分かりました】
【良かった。じゃあ金曜日の夜、迎えに行くから待ってて】

ええー?とまたしても仰け反って驚く。

「迎えに行くって、どこに来るの? え、まさか、ここ?」

アパートの部屋を見渡していると、また高良の方から入力してきた。

【楽しみにしてる。おやすみ、美蘭】
【はい、おやすみなさい】

とにかくそれだけを打ってスマートフォンを置く。

「どうしよう、恥ずかしくて会えない!」

クッションを両腕に抱いて、ゴロゴロと転がった。

「絶対顔が赤くなる! 緊張しちゃう! あー、会いたくない。いやでも、会いたい! どうしよう」

美蘭は一晩中、ドキドキソワソワしていた。
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