解けない魔法を このキスで
ホワイトデーには美蘭のリクエストで水族館に行き、夜は夜景が綺麗なレストランでディナーを楽しむ。
次にデートに行くならどこがいいかな、と考えながら、美蘭は日々の仕事に打ち込んでいた。

「新海さん、お疲れ様です」

『プラージュ横浜』での挙式に立ち合う日。
美蘭はブライダルサロンに入って来た高良に、仕事用のスマイルで挨拶する。
周りのスタッフに交際を気づかれるのは避けたかった。

高良は拗ねたような表情で「お疲れ様」と呟いたあと、美蘭の耳元で「夜は覚悟しろよ」とささやいた。
ふぐっ!?と美蘭は息を呑んで後ずさる。
高良はニヤッと笑ってから、「今日もよろしく、白石さん」と含んだ口調で言ってから去っていった。

(まったくもう、ヒヤヒヤするったら)

花嫁の控え室でドレスを準備しながら、美蘭は心の中で愚痴をこぼす。
とは言っても、ここに来る日は着替えを持って来ているし、なんならペントハウスに既に私服も置いてあった。

(でも仕事中は切り替えなきゃ。集中集中……)

気がつけば自分もニヤケそうで、美蘭は気を引き締めた。
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