解けない魔法を このキスで
かーすーがー!
幸せな日々を送る美蘭に、ある日春日副社長から電話がかかってきた。

(あ、忘れてた!)

名前の表示を見て思い出し、急いで電話に出る。

「はい、白石です」
『春日フライダルの春日です。白石さん、返事は決まった?』
「あ、はい。ご連絡せずにすみません。提携のお話は、僭越ながらお断りさせていただきます」
『ははっ、相変わらず切れ味のいいボールを投げるね』
「……はい?」
『まあ、予想はしていたからダメージはないけど。それより、近々俺と白石さんと新海副社長で食事がしたいんだ。どうかな?』

もはや美蘭はポカンとしてしまう。

「あの、時空が歪んだみたいに話が飛んだ気がするのですが……」
『あはは! おもしろいね』
「いえ、おもしろくはないです。一体、どういう趣旨で?」
『ビジネスの話だよ。じゃあ俺から新海副社長に連絡して、予定を聞いてみようか?』

美蘭はハッとして慌てて遮った。

「いえいえ! あの、私、ちょうど新海副社長に会う用事がありますので、直接聞いてみます」
『そう、分かった。よろしくね。じゃあまた』

プツリと切れた電話に、美蘭はしばし呆然としていた。
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