解けない魔法を このキスで
ミラノでの時間
ゴールデンウィークが終わり、いよいよミラノへの視察旅行の日がやって来た。

「ちょっと、信じられない! なにこのチケット」

空港でチェックインを済ませると、高良からチケットを受け取った未散は声を上げて驚いた。

「新海さん、これ、ファファ、ファーストクラスって書いてない?」
「ん? 書いてあるね」
「これ、新海さんのチケットでしょ?」
「いや。Tokiwa Michiruって書いてあるよ」
「どうして? 私と美蘭、エコノミーで予約したのに」
「オーバーブッキングでアップグレードされたみたいだな」
「すごーい、そんなことあるのー?」

未散の隣で、美蘭はちらりと高良を見上げる。
ん?と微笑みながら首をかしげてみせる高良に、美蘭もとぼけて肩をすくめてみせた。

(高良さんったら。絶対に自分が差額払ってアップグレードしたに決まってる)

だが未散の喜びように、ありがたい気持ちになり、そっと高良にささやいた。

「高良さん、ありがとう」
「ん? なにが?」
「なんでもない」

分かってるはずなのに、と思いつつ、敢えて美蘭も黙っておくことにした。

「美蘭、搭乗時間まで買い物しようよ」
「うん、そうだね」

保安検査場を通ってから、未散と一緒に買い物にいそしんだ。
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