解けない魔法を このキスで
しばらくは未散の心情をおもんぱかり、美蘭は高良に電話をする気になれずにいた。
メッセージのやり取りも、短く返事をする程度で、明らかにいつもとは違う。
一度だけ高良が【美蘭、なにかあった?】と聞いてきたが【なんでもないよ】と返してしまった。
未散はいつもと変わらず仕事中も明るく、完全に吹っ切れているのが分かる。
それだけに美蘭は、未だにやるせない気持ちを抱えて気を抜けば泣きそうになる自分を持て余していた。
そんな週末。
『プラージュ横浜』の挙式に立ち会う日が来た。
いつもと変わらず花嫁のドレスを整え、挙式を見守る。
無事にお見送りを済ませると、まるで見計らったかのように高良が現れ、美蘭の手を取りペントハウスへと向かった。
「高良さん、あの……」
美蘭が声をかけても高良は黙ったまま歩き続ける。
ドアを開けて部屋に入ると、すぐさま美蘭をぎゅっと胸に抱きしめた。
「美蘭、どうした? なにがあった?」
「え、あの……」
「美蘭が言わないなら聞かないでおこうとも思った。けど、顔を見たら我慢出来なくなった。美蘭、俺では力になれないか? こんなに辛そうな表情の美蘭を、黙って放っておくなんて出来ない」
「高良さん、違うの。本当になにもなくて。私は変わらず高良さんが好きで、高良さんもこうやって抱きしめてくれる。だから私は幸せで、でも……」
そこまで言った時、せきを切ったように美蘭の目から涙が溢れた。
「未散ちゃんが……。私の大切な未散ちゃんが」
美蘭は高良の胸に顔をうずめ、声を震わせて泣き続ける。
高良は黙って美蘭の頭をなで、気持ちが落ち着くのを待った。
やがてしゃくり上げながら顔を上げた美蘭に高良は優しく微笑み、手を引いてソファに座らせる。
美蘭はまだ止まらない涙を拭いながら、途切れ途切れに未散のことを話した。
「そうか、そんなことが」
高良はもう一度美蘭を抱き寄せ、頭をなでながら言い聞かせる。
「美蘭。常盤さんは美蘭がいてくれて、救われたと思うよ。誰にも相談出来ずに一人で抱えていた気持ちを、美蘭には打ち明けることが出来た。美蘭が自分のことのように怒って泣いて、気持ちに寄り添ってくれた。美蘭だけは味方なんだって、安心したと思う」
「だけど私は高良さんと一緒にいる。それが未散ちゃんを苦しめていたらどうしようって……」
「それが気になって、俺と電話するのも避けてたんだな。自分だけ幸せにはなれないって。だけど美蘭、逆の立場だったら? 美蘭は常盤さんの不幸を願うか?」
「まさか、そんな! 絶対にそんなこと思わない」
「それなら常盤さんも同じだ。誰よりも美蘭の幸せを願ってくれている。そういう人だろう? 常盤さんは」
「うん。ずっとずっと私の味方でいてくれた。どんな時も励ましてくれる優しい人なの、未散ちゃんは」
ふっと笑みをもらすと、高良は美蘭の顔を覗き込んだ。
「俺よりも長く美蘭と一緒にいたんだもんな、常盤さんは。美蘭、彼女が美蘭の幸せを願ってくれるように、美蘭も彼女の幸せを願おう。大丈夫、いつかきっと幸せになれるよ、彼女なら」
涙で潤んだ瞳で、美蘭は「うん」と頷く。
高良はそんな美蘭に微笑むと、また優しく頭を抱き寄せた。
メッセージのやり取りも、短く返事をする程度で、明らかにいつもとは違う。
一度だけ高良が【美蘭、なにかあった?】と聞いてきたが【なんでもないよ】と返してしまった。
未散はいつもと変わらず仕事中も明るく、完全に吹っ切れているのが分かる。
それだけに美蘭は、未だにやるせない気持ちを抱えて気を抜けば泣きそうになる自分を持て余していた。
そんな週末。
『プラージュ横浜』の挙式に立ち会う日が来た。
いつもと変わらず花嫁のドレスを整え、挙式を見守る。
無事にお見送りを済ませると、まるで見計らったかのように高良が現れ、美蘭の手を取りペントハウスへと向かった。
「高良さん、あの……」
美蘭が声をかけても高良は黙ったまま歩き続ける。
ドアを開けて部屋に入ると、すぐさま美蘭をぎゅっと胸に抱きしめた。
「美蘭、どうした? なにがあった?」
「え、あの……」
「美蘭が言わないなら聞かないでおこうとも思った。けど、顔を見たら我慢出来なくなった。美蘭、俺では力になれないか? こんなに辛そうな表情の美蘭を、黙って放っておくなんて出来ない」
「高良さん、違うの。本当になにもなくて。私は変わらず高良さんが好きで、高良さんもこうやって抱きしめてくれる。だから私は幸せで、でも……」
そこまで言った時、せきを切ったように美蘭の目から涙が溢れた。
「未散ちゃんが……。私の大切な未散ちゃんが」
美蘭は高良の胸に顔をうずめ、声を震わせて泣き続ける。
高良は黙って美蘭の頭をなで、気持ちが落ち着くのを待った。
やがてしゃくり上げながら顔を上げた美蘭に高良は優しく微笑み、手を引いてソファに座らせる。
美蘭はまだ止まらない涙を拭いながら、途切れ途切れに未散のことを話した。
「そうか、そんなことが」
高良はもう一度美蘭を抱き寄せ、頭をなでながら言い聞かせる。
「美蘭。常盤さんは美蘭がいてくれて、救われたと思うよ。誰にも相談出来ずに一人で抱えていた気持ちを、美蘭には打ち明けることが出来た。美蘭が自分のことのように怒って泣いて、気持ちに寄り添ってくれた。美蘭だけは味方なんだって、安心したと思う」
「だけど私は高良さんと一緒にいる。それが未散ちゃんを苦しめていたらどうしようって……」
「それが気になって、俺と電話するのも避けてたんだな。自分だけ幸せにはなれないって。だけど美蘭、逆の立場だったら? 美蘭は常盤さんの不幸を願うか?」
「まさか、そんな! 絶対にそんなこと思わない」
「それなら常盤さんも同じだ。誰よりも美蘭の幸せを願ってくれている。そういう人だろう? 常盤さんは」
「うん。ずっとずっと私の味方でいてくれた。どんな時も励ましてくれる優しい人なの、未散ちゃんは」
ふっと笑みをもらすと、高良は美蘭の顔を覗き込んだ。
「俺よりも長く美蘭と一緒にいたんだもんな、常盤さんは。美蘭、彼女が美蘭の幸せを願ってくれるように、美蘭も彼女の幸せを願おう。大丈夫、いつかきっと幸せになれるよ、彼女なら」
涙で潤んだ瞳で、美蘭は「うん」と頷く。
高良はそんな美蘭に微笑むと、また優しく頭を抱き寄せた。