冷酷社長の極上笑顔は私が独り占めさせていただきます
 私は何も言えず、私の手を握る社長の手の甲を見つめた。
 私よりも大きな手。そして綺麗な指。

「……違うんですか?」
「君はどう思う?」

(また私の考えを聞くの?)
 
 質問に答えずに質問返しとは卑怯ではないか、と思うものの、それを言える雰囲気ではない。
 
「違ったらいいな……と思っています」
「それはつまり、秘書に手を出すな、ということか」

 私は前を見た。もうすぐ私の家に着く。実家暮らしの私は、別の焦りを感じ始めた。

「あ、あの、この先に少し大きな公園があるんですけど」
「うん」
「天気もいいので、星が見えるかも……」

 社長は「了解」と言って、車線変更をし、公園の駐車場へ入った。
 市街地から離れた地域にある大きな公園なので、駐車場も広い。昼間は親子連れで賑わっているが、夜間は人影もなく、他の車も見当たらない。
 
 車を止めた社長は「星が見える」とフロントガラスに顔を近づけ、夜空を見上げた。
 そして私のほうを向く。

「もう少し話をしようか。時間は大丈夫?」

 私は「はい」と答える。

「まず、大迫さんとは付き合っていない。そのうわさとやらは、大迫さんのご両親の通夜に行ったことから出てきたのか。君たちの推理には恐れ入る」

 苦笑しながら社長は言った。
 私もつられて笑顔になる。実際、ものすごくホッとした。

「そうですか」
「でも、俺は……」

 社長の口から打消しの接続詞が出た瞬間、私の胸がキリキリと痛み始めた。

「『秘書に手を出す社長』とうわさされるかもしれない」

 ん?
 どういう意味だろう。
 それって、つまり……?
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