冷酷社長の極上笑顔は私が独り占めさせていただきます
「俺は君と『そういう仲』になりたい」

「……!!」

 私は屋外灯の明かりでほのかに照らされた社長の顔を真っすぐに見つめた。
 今まで見たことのない、困ったような、はにかんでいるような、不思議な表情の社長を――。
 
「私も……『そういう仲』になれたらいいな、と思います」

 暗くてよかった、と思う。
 私の顔は真っ赤に火照っているし、声は震えているし、今にも泣いてしまいそうだった。

 社長を見ると、ホッとした表情で微笑んでいる。

「交渉成立、だな」
「そうですけど……なぜか業務の話をしているような気分です」
「それもそうだな。だがそれは君が悪い」
「え、私のせいですか!?」

 つい鋭くツッコんでしまい、私は手で口を押さえた。
 社長は肩をすくめる。

「プライベートの時間に仕事の話をし始めたのは君だろ?」
 
 そうだろうか。
 私は今夜劇場で社長に会ってからのことを思い返した。
 
(そういえば、なぜ会社では笑顔を見せてくれないのか、と私が問いただしたせいで、何か変な流れになってしまったような……)
 
「そうでしたね」
「会社を出たら、会社の話は禁止だな」
「えー、難しいです」

 思わず笑ってしまった私に、社長は眉根を寄せて不満そうな視線を向ける。
 
「君は俺と会社の話しかできないのか?」
「じゃあ、どんな話をしましょうか」
「たとえば、明日は何をしているか、とか」
「明日!?」

 明日は土曜日。会社は休みだ。
 いきなり明日の話をするとは思っていなかった私は、慌てて明日の予定を思い出そうと脳をフル回転させた。
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