冷酷社長の極上笑顔は私が独り占めさせていただきます
「私は……暇人です!」
「奇遇だな。俺も暇だ」
「えっ、しご……、いえ、なんでもありません!」

 危ない。仕事をしないのか、と口にしそうになった。
 急に会社や仕事の話をしないようにするのはめちゃくちゃ難しい。
 そんな私の胸の内を読んだかのように、社長はわざとらしくため息をついた。

「君は俺にずっと仕事をしていろ、と言いたげだな。まさに秘書の(かがみ)だ」
「……すみません。お仕事をされている姿以外、拝見したことがなかったので」
「そんなことはないはず。君の前では……」

 私は目を見開いて社長を見る。
 
(もしかして、社長室のソファに横たわっている姿って、私以外見たことなかったりする――?)
 
 突然、心臓がドキドキと鳴り始めて、どういう表情をすればいいのかわからなくなった。
 口を開いて、でも適当な言葉が見つからず、唇を噛む。

「なぜか君がそばにいるとくつろげるんだ」

 運転席の窓に肘をつき、ほおづえをついて、社長は私を見た。穏やかな視線だけど、少しからかうような笑みを浮かべている。

「それに君が来てから毎日が楽しい。君を見ていると飽きないから」
「……私、そんなにおもしろくないですよ」
「これは個人の感想だから気にせず、君はただそこにいてくれればいい」
 
 私は夢を見ているような、現実感のないふわふわした気分だった。

「社長の笑っている顔、好きです」

 言ってしまってから、大胆な告白をしたことに気がついた。
 でも後悔より、爽快さが心に残る。

「俺の名前、知ってる? 唯子さん」

 急に名前で呼ばれて、ドキッと心臓が跳ねた。
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