素直になれないふたり
どうにもこうにも腐れ縁
「トーコさぁ⋯⋯そのワンピース、あまりにも露出度が高すぎないか?」
 東京郊外にある、地元の人々御用達のバー。
 この店の若きマスターで、腐れ縁のジローが私の服にケチをつけてくる。
「これ?サチが『手術したらサイズが合わなくなったから』って、くれたの」
「手術って、病気でもしたのか?」
「ううん。豊胸手術だって。お陰で、何着かお下がりをもらった」
「やれやれ⋯⋯トーコと愉快な仲間たちは相変わらずだな」
 呆れ果てたようにジローは言う。
「そういうジローはどうなのよ?あの最低な悪友にしても」
「俺は、見ての通り代り映えしないよ。例の友達は、二人とも結婚した」
「何それ!男はいいわよね。遊ぶだけ遊んでも、仕事にも結婚にも支障がなくて」
 私は、真面目に生きてきたはずが、こんなに崖っぷちなのに。
 うまくいかない人生を嘆いてみても仕方ないとわかっていながら、今夜もカウンター席で管を巻いている。
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