素直になれないふたり
 こんな私をジローが好きになるはずはないとわかっているのに、優しくされる度に勘違いしそうになる。
 おかしな話だ。
 あの夏、サチやアユは、男の子たちと深い関係にまでなったのに、今ではもう、そんなことはとっくに忘却の彼方で、次から次へと新しい相手と楽しむ日々。
 それに対して、たった一度、軽いキスを交わしただけの私は、いつまで経ってもジローとの過去を引きずっている。
 不完全燃焼に終わった恋ほど忘れられないと聞いたこともあるが、そういうことなのだろうか。

 もし、素直になることができたら⋯⋯否、どのみち無理に決まっている。
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