聖女王子とスパダリ女騎士 ~王女の護衛のはずが、寵愛を受けています~
「本当にかわいらしいお方だ」
 ピクリと震える睫毛も月光の色。騎士として日に焼けた自分とは違う、真っ白な肌。夜だけを生きて来たのだと言われれば信じてしまいそうだ。あるいは本当に月光の精霊の化身だろうか。

 苦し気にもらす吐息すら艶やかで、自分が男であればすぐさま手を出す気がしてならない。
 女を捨てたからキスが平気だ、なんて嘘だ。平然としていなくては騎士ではないから平静を装っただけで、本当は初めてのキスをこんな形で失って落ち着かない。

 それでも。
 リーズロッテは彼に目を落とす。
 それでも、初めてが彼で良かった。ほかの誰でもなく。
 リーズロッテは自身の唇にそっと指を添える。それからぎゅっと唇を引き結び、背筋を伸ばしてドアをにらむ。

 さすが俺の近衛、と言われたのが、思いのほか嬉しかった。
 彼の近衛として、絶対に守り抜いて見せる、とリーズロッテは心に誓った。

***

 翌朝。
「失敗しただと!?」
 私室でドルシュの報告を受けたマルシエルは、激情のままに彼をどなりつけた。

「申し訳ございません。新たに近衛になった女に邪魔をされまして……」
「女だてらに騎士になったとかいうやつだな」
 基本的には軍は男性で構成されている。女性兵士は少数で、ほとんどは後方支援を担う。前線に出る女性兵士は現在ではリーズロッテくらいで、知れ渡っている。
 マルシエルは不機嫌に椅子に座り直す。
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