聖女王子とスパダリ女騎士 ~王女の護衛のはずが、寵愛を受けています~
 リーズロッテはほっと息をつく。魔獣の生温かい血で全身が濡れているが、王女が襲われる事態に比べたらどうということはない。
 ドルシュが慌てて駆けつけ、ぴくぴくと痙攣して血の泡を噴く魔獣の首に剣を突き立てる。

「とどめだ!」
 なんども首を刺して、動かなくなったのを確認したドルシュは、剣を高々とかかげた。
「討ち取ったぞ!」
「お見事!」
「さすがドルシュ大尉!」
 ドルシュのとりまきの兵士たちが歓声を上げるが、それ以外の者たちはしらっとしていた。

 倒したのはほぼリーズロッテだ。
 なのに、まるで自分で倒したかのように宣言するドルシュには苦笑を禁じえない。魔獣討伐の際にはいつもこの流れなので、あきれはしても驚きはしない。

 魔術師が結界を解き、リーズロッテは血を振り払って剣を鞘に戻す。
 ふと、視線を感じて振り向いた。
 ばちっとぶつかったのは無表情の王女殿下の視線。
 王女はすぐに団長に顔を向けた。

「疲れました。退席します」
「お供いたします」
 団長が恭しくお辞儀をすると、王女殿下はドレスを揺らして席を立った。
 直後、ぐらりと体が傾く。

 リーズロッテはとっさに駆け寄ってその体を支えた。
「御身に触れましたご無礼、なにとぞお許しを。ご無事であられますか」
 顔を上げた王女の頬に紅が差し、同性ながらに胸がどきんと鳴った。男ならばひとめで惚れ抜くことだろう。
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