聖女王子とスパダリ女騎士 ~王女の護衛のはずが、寵愛を受けています~
「リーズロッテ・シャイン・レークフォード中尉、参上いたしました」
 敬礼をしてから直立するリーズロッテに、彼は姿勢をくつろげるように告げる。
 休めの姿勢をして彼女は言葉を待った。

「相変わらず、お前は勝ちに執着がないな」
「執着しておりますよ。勝たねば命がありませんから」
 ひょうひょうと言ってのけるが、そういうことではないのはわかっている。魔獣を倒した手柄をドルシュに譲ったことを言っているのだ。

「ドルシュとの剣の訓練では三度に二度は負けてやっているだろう。全勝させてやらない理由はなんだ?」
「私にもプライドがあるので二度までにしております。ただでさえドルシュ殿は訓練をさぼっておられるのですから、負けたことで奮起していただけると良いのですが、なかなかうまくは参りません」
「自分を虐げる者の練度の心配とはな」
 団長はくすくすと笑う。

「笑い事ではありません。背を預ける以上、少しでも腕を上げて頂かなくては」
「あいつがまっとうに戦うことなんてないだろうがな」
 リーズロッテは肩をすくめる。まったくその通りだ。彼は身分を使ってなるべく前線に出ずにすむように手配しているし、ましてや今は隣国とは和平が結ばれていて、軍の仕事といえばもっぱら魔獣退治と治安維持だ。

 リーズロッテはむしろ志願して討伐の前線に出ている。没落した家のため、少しでも稼ぎたいからだ。没落した実家の収入は少ない。頭の良い弟のために学費を稼いで、できれば大学を出させてやりたい。両親もそれを期待している。ドルシュの不興を買って軍を追い出されるようなことにだけはなりたくない。
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