フェルナンドの薔薇は王弟殿下の愛で輝く~政略結婚で人族に嫁いだ魔族令嬢は、王弟殿下の優しさで愛を知る~
「他国から攻められようとしているのですか? まさか、デズモンド?」
「そうじゃない。アルヴェリオンが警戒すべきは、他国ではない。ましてや、デズモンドでもないよ」
「では、いったい……」

 聞きながら、声が震えそうになった。敵が外でないとすれば、後は内部の者。
 脳裏に、冷たい瞳が浮かぶ。そう、それは──

「この国を蝕む者は、王妃ヴィアトリス」

 エドワード様の声に、背筋が震えた。

 謁見の間で初めて対面した時、ヴィアトリス王妃の目は笑っていなかった。
 そうよ、私はあの黒い瞳を見て、獲物を値踏みするようだと感じた。それが気のせいではなかったということね。

「兄上は体調を崩され、王妃が実権を握っている。そこに群がる一部の諸侯が懐を肥やす……」

 諸侯は特権を欲してヴィアトリス王妃に貢ぐ。その為、地方領主は納税を強化し、自由農民の不満が高まっている。王妃の顔色をうかがう宮廷貴族も増えている。

 王都の華やかさからは想像ができない、国の腐敗が始まっているとわかる一端を、エドワード様は掻い摘んで教えてくれた。
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