フェルナンドの薔薇は王弟殿下の愛で輝く~政略結婚で人族に嫁いだ魔族令嬢は、王弟殿下の優しさで愛を知る~
「兄上は、日増しに弱られる。ほんの一年前はお元気だった。それが、今はまったく覇気がない様子」
「……まさか、毒を盛られているのでは?」
「かもしれない。しかし、それを暴くことも出来ずにいる」

 ロベルト王に最も近いヴィアトリス王妃なら、簡単に毒を盛れるわ。
 でも、殺すことが目的じゃないということね。王を弱らせ、実権を握るのが目的。だとしたら、何年もかけて弱らせていた可能性だってあるわ。

 簡単に尻尾を出さないというより、用意周到に進めてきたのかもしれない。
 ヴィアトリス王妃の冷たい眼差しを思い出し、背筋が冷えた。

 なんて怖い女なのかしら。
 力が全ての魔族が、可愛く見えてくるわ。

 ロベルト王が傀儡となっているなら、ヴィアトリス王妃を力でねじ伏せることは無理ね。

 どうにか、追い詰める証拠を掴むしかない。とすれば、誰かが王妃の懐に入り込むのがいいわ。それが可能なのは侍女か、彼女を慕う諸侯、令嬢……

「エドワード様、私なら王妃に近づけます」

 ブローチに指を添え、彼を真っすぐに見つめた。
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