フェルナンドの薔薇は王弟殿下の愛で輝く~政略結婚で人族に嫁いだ魔族令嬢は、王弟殿下の優しさで愛を知る~
 エドワード様の綺麗な眉が少し歪む。一度唇を噛み、深く息を吸った彼は、私を見た。

「……頼めるか?」
「このブローチは、その為のものでしょ?」
「それは……すまない」

 傷を負ったわけでもないのに、エドワード様の顔はますます辛そうになる。こんな顔をさせたくないのに。

「大丈夫です。私はフェルナンドの薔薇……戦場ではお役に立てませんが、精一杯、エドワード様のために──!?」

 働いてみせましょうといい終える前に、エドワード様は強い力で私を引き寄せ、その腕で抱きしめた。

「こんなことは、させたくなかった」
「……エドワード様?」
「本心をいえば、君を王妃に近づけたくはない。しかし……悪魔を追い出さなければ、城に君の居場所も作れない。だが、このままでは国もなくなってしまうだろう」

 肩を締め付ける腕に力がこもり、伝わる鼓動が耳に触れた。
 伝わってくる激しい鼓動と感情に嘘偽りなど感じない。

「私は……王弟だ。君を連れて逃げ出すわけにもいかない。許して欲しい」

 首筋に、熱い雫を感じた。
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