フェルナンドの薔薇は王弟殿下の愛で輝く~政略結婚で人族に嫁いだ魔族令嬢は、王弟殿下の優しさで愛を知る~
 リリアナは庭で愛らしく微笑みながら「色々と制約もありますが、きっと、お役に立てますわ」といった。それを楽観視した自身の浅はかさに背筋が震える。

 リリアナを信じている。だけど、それでも──招待状を握りしめ、部屋の奥、リリアナの寝室に繋がる扉へと向かった。

 扉をノックする拳に力がこもる。
 返事が待ちきれず、もう一度叩こうとした時だった。

「どうかされましたか、エドワード様?」

 その向こうから、穏やかな声が聞こえた。

「リリアナ、話がある」
「……もう寝ようとしていたところです。その、明日ではだめでしょうか?」

 少し戸惑う気配を感じた。ナイトドレス姿を見られたくないとか、なにか、思いがあってのことだろう。しかし、俺の意思は変わらない。

「急なのはわかっている。だが、今すぐ話したい」
「……わかりました。少し、お待ちいただけますか?」
「ありがとう、リリアナ」 
 
 扉の向こうで衣擦れの音がし、リリアナが一度、扉を離れていくのがわかった。それからすぐに、小走りにかけてくる足音がした。

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