フェルナンドの薔薇は王弟殿下の愛で輝く~政略結婚で人族に嫁いだ魔族令嬢は、王弟殿下の優しさで愛を知る~
 扉の鍵が外される音がカチリと響いた。
 
 静かにドアが開けられる。そうして、ショールを肩にかけたリリアナの姿が現れた。

「どうかされましたか?」

 困った顔がハッとした。その視線が私の後ろに控えるデイジーとサフィアに向けられ、私の手に握られている招待状へと向けられた。

 なにを話したいのか、察したのだろう。
 リリアナは少し眉をひそめて胸元で手を握りしめた。

「……明日、ご相談するつもりでした」
「ああ、二人に聞いた」
「王妃様に近づく好機です。それに、ここで断りでもしたら、怪しまれるかもしれません」

 私に止められると思ったのだろう。少し早口になったリリアナが訴えた。

「私の能力で、必ず王妃様の本心を聞き出します。どうか、信じてお待ちを──」
「信じていない訳じゃない」

 リリアナの手を掴み、腕の中に引き入れた。
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