フェルナンドの薔薇は王弟殿下の愛で輝く~政略結婚で人族に嫁いだ魔族令嬢は、王弟殿下の優しさで愛を知る~
サフィアの言葉に、やるせない思いを感じた。
「ここに書かれていた物語のこと、もしも、わかるなら教えてくれる?」
「……書かれていたのは『瑠璃姫の涙』という、悲恋の物語です」
サフィアに勧められ、椅子に座って彼女の話に耳を傾けた。
◇◆◇
ある国に、心優しい姫がいた。
姫は城の若い騎士とひそかに愛を誓い合っていた。だが、冷酷な魔女である継母は、誰からも愛される姫を妬んだ。
魔女は姫を陥れるため、一つの罠を仕掛ける。若い騎士を遠い戦場へ送り、姫に偽の訃報を告げたのだ。
悲しみに暮れる姫に、継母は甘い言葉をかけ、魔法の葡萄酒を飲ませた。
魔法で心を失った姫は、継母が差し向けた隣国の貴公子を愛する騎士と誤信してしまった。そうして、彼を受け入れた姫は、やがて子を宿した。