フェルナンドの薔薇は王弟殿下の愛で輝く~政略結婚で人族に嫁いだ魔族令嬢は、王弟殿下の優しさで愛を知る~
「でも不安で……」
「それなら、私も横になっていいか?」
「──えっ?」
「抱きしめさせてくれ」

 少し不安げな瞳が、私を見ていた。

 夜を共にしたことがないというのに、こんな明るい朝から一緒のベッドで横になるなんて。その恥ずかしさに頬が熱くなる。だけど──

「側にいてください。そうしたら、眠るのも怖くありません」

 エドワード様を招き入れて、厚い胸に頬を寄せる。その心音に耳を傾けると、彼がいるのだと実感がわいてきた。

 規則正しい鼓動は、ほんの少し早い。だけど、それが心地よく耳に響く。

 大きな手が髪を撫で、頬に触れる。私がいることを確かめるように、身体を撫でていく手に、確かな鼓動を感じていた。

「……夢を見ていました」
「夢?」
「真っ暗な森にいました。とても熱くて苦しくて、誰かが悪魔がやってくると囁くのです」
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