フェルナンドの薔薇は王弟殿下の愛で輝く~政略結婚で人族に嫁いだ魔族令嬢は、王弟殿下の優しさで愛を知る~
「森の悪魔か?」
「……おそらくは、死に直面した私は、無意識にその恐怖を森の悪魔と結びつけたのでしょう」

 思い出すだけでも恐ろしい。
 でも、その恐怖から逃げようと足掻くことが出来た。諦めそうになったけど、私の手を掴んでくれた人がいた。こっちへと導いてくれたのは……

「誰かが『こっちだよ』って私の手を引っ張ってくれたんです」

 エドワード様は少し目を見開くと、低く「そうか」と呟く。そうして、繋いでいた手を少し強く握りしめた。

 温かく大きな手。私はこの手が大好き。でも、夢の中で導いてくれた白い手とは違う。私と同じくらい小さかった。それに、白磁のように滑らかで。

 思い出そうとしても、その顔はわからない。だけど、光に中で振り返った人影の微笑みはとても優しくて──夢の中に現れた人影へ思いを巡らせながら黙っていると、エドワード様が再び「本当によかった」と呟いた。

 私の頬を撫でるエドワード様が、少し眉を下げて笑った。

「悪魔に連れていかれていたら、今頃、私はこの身を呪っていたよ」
「エド……」
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