フェルナンドの薔薇は王弟殿下の愛で輝く~政略結婚で人族に嫁いだ魔族令嬢は、王弟殿下の優しさで愛を知る~
「そんなことないわ」
「そんなことあるさ。エリザを死に追いやり、君を傷つけた王妃を許せるんだから」
「許したわけじゃないのよ。でも、フェルナンド家に移送されるなら……死ぬ方がどんなに楽かと思うことでしょう。お兄様を怒らせてしまったのですから」

 冷ややかに微笑むお兄様の姿を思い出し、ぶるりと身を震わせた。
 若くしてお父様の後を継いだお兄様。そのお兄様に刃向かうものは一族に誰一人としていない。そんなことがバレでもしたら、血縁だとしても、容赦をしないと誰もが知っているからよ。

「フェルナンド卿はそんなに恐ろしいのか?」
「ええ、とっても。魔狼の群れさえ尻尾を丸めて逃げ出しますわ」
「……それは心強いな」
「そうですね。お兄様にお任せすれば、安心ですわ」

 あのお兄様を怒らせたのだ。
 王妃は、王都で断罪された方が遥かに幸せだと思うかもしれないわ。
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